特集 OTの臨床実践に役立つ理論と技術―概念から各種応用まで
第6章:精神・心理に関するもの
4.認知行動療法
大嶋 伸雄
1
1首都大学東京大学院人間健康科学研究科
pp.784-792
発行日 2013年6月20日
Published Date 2013/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100195
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認知療法と認知行動療法
認知療法(cognitive therapy:CT)や認知行動療法(cognitive behavior therapy:CBT)は,人間の気分や行動は認知(ものの考え方や受け止め方)の強い影響を受けるという前提から成り立っている.認知にゆがみや偏りが存在すると,正常な人間生活へ悪影響を及ぼすため,そのゆがみや偏りを修正して問題を解決する精神(心理)療法の一つである1).
CTとCBTはもともと別の学派から発生した治療理論であるが,現在の臨床においてはほぼ同じものと考えることができる.CBTはCTと行動療法との総称であるともいわれ,その源流として,まず精神分析からの流れがある.Aaron T. Beckらによる精神分析的心理療法では,抑うつ病患者等の主観的体験(認知)を解釈せず,そのまま扱うことの重要性を唱え,特に患者らの認知のゆがみに焦点を当てて修正することで抑うつ患者の治療が可能であると考えた1).これがCTの黎明期で,1960年代からはさらにCarl Rogersのクライエント中心療法等,いくつかの技法を取り入れて統合療法として発展してきた.
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