手術テクニック
多汗症に対する胸部交感神経切除術のコツ
大田 守雄
1
1国立療養所沖縄病院外科
pp.163-165
発行日 1999年4月15日
Published Date 1999/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.4426900022
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はじめに
多汗症に対する胸腔鏡下胸部交感神経遮断術は近年,本邦でも普及しつつある.われわれは1992年8月以来,手掌多汗症に対し本邦で最初に胸腔鏡下胸部交感神経切除術を施行し,現在まで170例(340肢)を経験した.当初は交感神経焼灼術を施行していたが,症例を重ねるにつれ電気メスによる焼灼術の手術手技のみでは対処できない症例が存在することがわかってきた.焼灼術は簡便で短時間で行えるなどの利点を有するが,一方では不完全な手術に起因する再発症例や電気メスによる肋間神経の障害に起因する上肢の痔痛,皮膚知覚違和感などが存在する事実がある.
焼灼術と切除術を比較すると術後早期の発汗停止効果や美容上の差異はないものの,時日の経過とともに焼灼術施行症例における再発が懸念される.焼灼術と切除術のいずれを選択しても,術後早期には発汗停止効果に差異がなく,焼灼術のほうが手技が簡便である.したがって,手術手技として広く選択される理由となっている.しかしながら両手技を比較する際には,単に手術時間の長短,手技の簡便性,術後早期の発汗停止効果,代償性発汗の過多だけで有用性を論ずるべきではない.執刀医は1つの手技にこだわらず,個々の症列に応じた手術手技を修得する必要がある.
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