別冊秋号 透析と麻酔
PART3 透析患者の合併症と周術期の対処
32 透析患者と手術—腎臓内科医・透析医からのメッセージ
柴垣 有吾
1
1聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科
pp.229-231
発行日 2023年9月20日
Published Date 2023/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200384
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まずは,『透析と麻酔』という特集を組まれたことに御礼を申し上げたい。この特集を読んでいただくことによって,より多くの麻酔科・外科の先生方の,透析患者の手術や周術期管理の能力が向上することはもちろん重要であるが,それ以上に期待しているのは,透析患者の手術への“なんとなく”な忌避感が薄らぐことである。
個人的な経験はあまり本誌にふさわしくないと思うが,少し述べさせて欲しい。過去には立派で尊敬すべき医師であった父が,胃癌手術や合併症を契機に身体的・認知的フレイル高齢者となり,誤嚥性肺炎でたびたび入院する状況となった経験である。父は,ある日転倒して大腿骨を骨折した。その際,誤嚥性肺炎で入院していた大規模センター病院では,術後合併症(誤嚥など)のリスクが高く,手術はしないとの方針を伝えられた。しかし,父にとって移動がままならないことは,ただでさえフレイルで制限のあった生活にさらなる制限が生じ,生きがい(美味しいものを食べに家族で旅行すること)を失うことでもあった。保存的加療の方針となったことで,地域の小規模病院に転院したが,運命とは不思議なもので,その病院は小さいながらも高齢者医療に精通した医師が多く,結果として父や家族と相談のうえで手術を行うこととなった。あくまで結果論ではあるが,父は術後合併症なく,その後も日常生活動作(ADL)を一定期間維持することが可能となり,大病院ではなかった笑顔を取り戻した。
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