特集 術前・術後管理 '91
E.術後全身的管理
下肢静脈血栓症・肺梗塞
矢野 孝
1
,
岡本 哲也
1
1名古屋大学医学部第1外科
pp.120-121
発行日 1991年10月30日
Published Date 1991/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900585
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■病態生理と問題点■
静脈血栓の形成にはVirchowの古典的3要素,すなわち,血液凝固能の亢進,血管内皮の傷害,血流うっ滞があげられている.手術後は,通常ベッド上で安静臥床が必要なことが多いが,そのために血流うっ滞が起こりやすくなる.また,血流うっ滞によって,血管内皮に低酸素性の傷害を生じる機序も示唆されており,手術侵襲に伴う血液凝固能の亢進も加わって,静脈血栓症が起こりやすい状況にある.
下肢では,静脈循環の大部分は深部静脈系によって行われている.深部静脈に広範の血栓性閉塞が起こると,静脈血のうっ滞により,罹患肢は緊満・腫脹し,疼痛を伴い,皮膚の色調はチアノーゼとなるのでわかりやすい.下腿に限局する静脈血栓の場合は診断が難しいことがある.術後に腓腹部に腫脹を認めたり重圧感などを訴える場合には,深部静脈血栓症を念頭に置く.静脈血栓症が起こると罹患静脈に沿って圧痛を生じるのが普通で,大腿膝窩静脈領域の触診で圧痛が証明されることが多い.
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