別冊秋号 周術期管理
PART2 術前合併症アップデート
15 高血圧
辛島 裕士
1
1九州大学病院 手術部
pp.87-92
発行日 2020年9月15日
Published Date 2020/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200156
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高血圧合併患者を担当することは,麻酔科医には珍しくはない。それもそのはず,高血圧は生活習慣病の中で最も頻度が高く,2016年国民健康・栄養調査によると,日本人の高血圧有病率は,50歳以上の男性と60歳以上の女性では50%を超え,75歳以上では,実に男性74%,女性77%となっている。高齢者では高血圧でない患者のほうが少数派であるということは,日々の臨床においても実感していることであろう。
高血圧は,生涯にわたる循環器疾患発症の最大の危険因子であり,慢性危険因子と急性危険因子の二面性をもつ。前者として高血圧は動脈硬化などの血管障害を引き起こす。血管障害は,糖尿病,脂質異常症,喫煙とともに促進され,心不全,腎不全など臓器障害の進展につながる。後者としては,血圧サージ(急激な血圧上昇)が血管内プラークの破綻,血管内皮傷害,心筋への圧負荷を引き起こし,脳卒中,心筋梗塞,大動脈解離ならびに急性心不全などの脳心血管系疾患発症のトリガーとなる。したがって,降圧療法の最大の目的は,血管障害進展と危険な血圧サージの抑制である。
日本高血圧学会(JSH)は,2019年4月に高血圧治療ガイドライン(JSH 2019)の改訂を行った1)。本稿では,JSH 2019の内容を踏まえて,内科的な最新のスタンダード,治療目標,治療薬の考え方について概説する。さらに高血圧患者の周術期管理で注意すべき点に関しても言及する。
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