別冊春号 2020のシェヘラザードたち
第12夜 麻酔科学と救急医学—場の成長と発展のために
松田 直之
1
1名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野
キーワード:
麻酔科学
,
救急医学
,
安全管理
,
パワーハラスメント
,
アサーティブ・コミュニケーション
Keyword:
麻酔科学
,
救急医学
,
安全管理
,
パワーハラスメント
,
アサーティブ・コミュニケーション
pp.71-75
発行日 2020年4月10日
Published Date 2020/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200127
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麻酔,集中治療,救急医療のプロフェッショナルにおいて,患者の利益が高くなるように最善の医療を提供するための工夫は多様である。医の最善を工夫する際に,その立ち位置が変わると視野も変わる。正の方向,あるいは未来方向からとらえる視点と視野,一方で,負の方向,あるいは過去から現在をとらえる視点と視野がある。また,良いものを与えようとする工夫の一方で,悪いものを与えないように工夫しようとする姿勢もある。こうした姿勢が,私たちの潜在意識の中で癖となってしまっているとき,私たちは自由な拡大性や包容性をなくし,討議する機会を失い,恐れや憎しみが蔓延する。
自身が絶えず成長するためには,常に自身の癖を理性的に自省し,自身をその癖から開放しようとする心が大切である。プロフェッショナルとしては,未来方向から現在をみて,最高の利益を現在に与えられるようにプログラムする「成功予測のプロ」,過去方向から現在をみて,不利益を未然に防ぐようにプログラムする「失敗予測のプロ」,このどちらの考えも取り込めるとよいのかもしれない。そんな中,時にプロフェッショナルは,提供した最善の工夫により社会の中で弾圧されることがある。
今夜は,皆さんが仕事の過程で傷つけられたり,悩んだりしたときの自省について考える。私たちがプロフェッショナルとして必要と感じるものは,社会にも必要なことである。抵抗にあってもあきらめずに伝え続けることは,プロフェッショナルに必要なことである。発信する私たちは,一方で反応する私たちでもあり,生じた事象に対する洞察や思索を繰り返し,アサーティブ・コミュニケーションを通して自身や社会を成長させることが大切である。
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