講義ノート 新しい在宅看護論精神看護学
人間関係論としての精神看護学
2 人間の成長と人間関係の発展
武井 麻子
1
1日本赤十字看護大学
pp.1034-1047
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901509
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対象関係論の考え方と精神障害の理解
人間のあらゆる葛藤の起源が幼児期の葛藤にあるという考え方は,フロイトが精神分析理論として最初に定式化したものである.フロイトは当初,人間の行動を促す内的な動因は性本能であると考えた.この性本能に基づく衝動が満たされず,抑圧されることによって,人はさまざまな障害を表すと考えたのである.
フロイト以後,精神分析はメラニー・クラインやフェアベーンといった分析家たちによって,対象関係論Object Relations Theoryとして発展してきた.彼らは,人間を突き動かすのは性的な欲求のほかに,攻撃的な欲求でもあると考えた.フロイトのいう性衝動自体は,特定の対象に向かう性質のものではない.それに対して,対象関係論では人間の本能的な欲求は初めから他者に向けられているとする.つまり,人間は関係を求めて生まれてくるというのである.
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