特集 身体診察
各論編
4.胸部の診察—系統的な視診,触診,打診,特に聴診
藤本 裕太郎
1
,
則末 泰博
2
Yutaro FUJIMOTO
1
,
Yasuhiro NORISUE
2
1東京ベイ・浦安市川医療センター 総合内科/呼吸器内科
2東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科/呼吸器内科
pp.47-56
発行日 2022年9月20日
Published Date 2022/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900997
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胸部の診察は,病態の把握や鑑別診断において非常に重要な役割を担っており,今後いかに検査技術や検査機器が発達したとしても,その役割と価値は失われることはない。
例えば,空咳という主訴で受診した患者の背側底部のfine cracklesによって間質性肺炎を疑い,胸部高分解能CT(HRCT*1)をオーダーすることや,呼吸困難の理由が慢性閉塞性肺疾患(COPD*2)のみであると思い込んでいた患者で,wheezeの程度が受診するたびに大きく変動していることから,気管支喘息のオーバーラップを想起してさらなる問診や他の検査を追加する,などは,日々の診療では珍しくない。胸部の診察において視診,触診,打診,聴診(なかでも視診と聴診の情報量が多く,診療に有用であると筆者らは考える)を系統的に行うことによって,さらなる問診,画像検査,検体検査の施行につなげ,より正確で効率的な診断を行うことが可能になる。
本稿では,教科書的な説明は最小限にとどめ,胸部の診察,特に聴診所見によってどのような病態を想起し,意思決定につなげていくかについて説明する。また,聴診所見が有用であった実際の症例も紹介する。
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