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非代償性心不全患者は基本的に溢水状態にあるが,その病態は多様であり,何を目安にどこまで除水すべきかを画一的に考えることができない。病態に応じて除水のスピード,投薬方法などに違いが生じるのは当然であり,適正なゴールが,適切な時間軸で考慮されるべきである。ACC*1/AHA*2ガイドライン1)では,適切な利尿は,浮腫や頸静脈怒張の解除など,うっ血状態改善の証拠がみられるまで必要とされているものの,主治医の主観に依存することが多く,適切な除水の終了,除水の底を告げてくれる明確な客観的指標はない。“経験に基づいた”「臨床的うっ血」の解除の判断では,実は適切な除水が完遂できてないケースもあり1),退院後すぐに再入院を余儀なくされる患者も多い。
自覚症状,身体所見を中心に判断した「臨床的うっ血」*3の解除と,肺動脈カテーテルや心エコー図検査を駆使して判断した「血行動態的うっ血」のそれとでは時にギャップが存在し,臨床的なうっ血を解消しても血行動態的にはまだまだうっ血していることがある。「血行動態的うっ血」の解除を得たうえで退院したほうが心不全再入院が減ることは2000年以前にすでに報告されており2),臨床的にうっ血が解除できたと考えられる症例においても,その時点で血行動態を再評価することが重症心不全患者ではより重要になる。
あとどれくらい除水すべきなのか,今は過剰除水なのか,引きたいけど引けなくなってきた,このような壁に当たりながら診療するのが心不全である。「とりあえず利尿薬」「困ったらドブタミン」など感覚的な診療では,治療抵抗性心不全の壁にぶつかったときに無策になり得る。心臓生理学的な考察,循環動態的な病態把握がその都度整理されていなければ,自信をもって次のステップに進むことはできない。
本稿では,急性期心不全治療の中核である除水について,何を指標に,どれだけ除水するか,その過程で遭遇する利尿薬抵抗性や強心薬の使用の必要な状況などについて述べる。
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