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第1章 心不全の疫学,心不全予後予測スコアとその使い方
皆さん,disease trajectoryという言葉をご存知でしょうか? trajectoryとは直訳すると「(ロケットなどの描く)弾道」です。disease trajectoryは「その病気の自然歴」を指します。癌であれば,Stage 4で治療抵抗性になり,身体機能が低下すると1〜2か月以内には高率に亡くなります*A。一方,心不全の生命予後は,癌ほど明確ではありません。心不全は通常,進行性の病気です。急性増悪を繰り返し,最初は復活しますが,次第に回復が乏しく,最後は頻回に入院になり急激に弱ることが多いです。
予後が悪いことが予測できる因子があります*B。「BMIが低いと予後が悪い」は驚きかもしれません。BMIは,高すぎると「心不全発症のリスク」,いったん心不全を発症してからは,低いと「死亡リスク」です(Obesityパラドックス)。心不全で入院するようなことがあれば,院内死亡率は3〜6%,生存退院できても10〜15%は1年以内に死亡すると報告されています。目の前の患者さんの生命予後は,外来患者さんであれば,Seattle Heart Failure Modelなどで推測できます。心不全を診断したら,最初のうちにdisease trajectory,すなわち予後を説明することが重要です。“Hope for the best”はもちろん,“Prepare for the worst”として,今後どうなる可能性があるかをきちんと伝え,万が一重篤な状態になったときのためにアドバンス・ケア・プランニングをすべての患者で開始することが重要です。総論として,心不全患者の予後予測について,だいたいの考えを身につけておきましょう。
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