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周術期には,循環器系では急性心筋梗塞や心不全,不整脈(特に心房細動),呼吸器系では無気肺,肺炎などの合併症のリスクがある。リスクを減らすため,術前,術中,術後のそれぞれについて対策を立てる必要がある。
術前
・循環器系,呼吸器系のリスク評価,血糖や栄養の管理,深部静脈血栓症(DVT)や感染性心内膜炎のリスク評価,中止すべき薬物の吟味などを行う(内科,麻酔科)
・リスクがあればなるべく状態を改善させ,必要に応じて予防策を講じる。リスクが高すぎるなら手術の延期または代替案を考える(内科,外科)
・さらに長期予後を改善させるよう介入する(内科)
術中
・モニターして合併症の早期発見,早期治療を行う(麻酔科)
・血行動態を安定化させる(麻酔科)
・出血量を少なくし,手術時間を短くする(外科)
術後
・モニターして合併症の早期発見,早期治療を行う(集中治療科)
・急性心筋梗塞を早期発見し,循環器科の介入を要請する(集中治療科,循環器科)
・合併症を減らすために術前から施行していた処置は引き続き行う(集中治療科,内科)
このように,さまざまな専門科が周術期にかかわるが,実は内科医も大きな役割を果たさなくてはならない。例えば大腸内視鏡で大腸癌と診断した場合,“外科医に引き渡して内科は終了”ではなく,その時点から内科医は手術に向けて患者のコンディションをよくしていかねばならない。麻酔科は手術直前にコンサルトを受けることが多く,この術前コンディション作りに最も早く介入できるのは内科医である。そのため,米国では研修中も術前の評価に関する教育プログラムは多い。米国内科学会(ACP*1)の教育セッションでも多くの時間を割いて,周術期の教育が行われている。
周術期の循環器系の問題としては下記のようなものがある。
◦虚血性心疾患があれば周術期の急性心筋梗塞のリスクは高くなるのか?
・術前に虚血性心疾患のスクリーニング(トレッドミルや負荷心筋シンチグラフィなどの心臓負荷試験など)は必要か?
・スクリーニングにより,どれくらい正確に周術期リスクを予測できるか?
・虚血性心疾患の薬物療法(β遮断薬やスタチン)は,周術期の急性心筋梗塞予防に役立つか?
・血行再建〔経皮的冠動脈インターベンションpercutaneous coronary intervention(PCI)や冠動脈バイパス術coronary artery bypass grafting(CABG)〕で周術期の心筋梗塞は予防できるのか?
◦高血圧は周術期の脳卒中のリスクになるのか?
・それを術前にコントロールすれば,周術期の脳卒中は予防できるのか?
◦術前に心エコーをすれば,周術期の心不全のリスクは評価できるのか?
◦弁膜症は周術期にどのようなリスクになるか?
◦心房細動は周術期にどのようなリスクになるか?
◦ペースメーカや植え込み型除細動器の周術期の取り扱いはどうすればよいか?
そのなかから心筋虚血について,Part 1では術前の心筋虚血評価方法や心血管イベントリスクを減らすための予防について,Part 2では心臓負荷試験の意義について解説する。
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