特集 消化管疾患
2.上部消化管愁訴—愁訴の組み合わせから疾患・病態を鑑別する
篠浦 丞
1
Susumu SHINOURA
1
1沖縄県病院事業局 県立中部病院兼県立病院課
pp.623-638
発行日 2014年9月1日
Published Date 2014/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900327
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■症状から病態を推測するアプローチ
近年,日本においても,器質的疾患は否定的だが上腹部愁訴が持続している患者に対して,機能性ディスペプシアfunctional dyspepsia(FD),また,腹痛に加えて下痢や便秘などの症状を呈する場合には過敏性腸症候群irritable bowel syndrome(IBS)という診断がつけられることが多い。これらを統合する概念がFGID(functional gastrointestinal disorder)である。
FGIDは,腸管蠕動や知覚の異常はあるが,現行の一般的な検査,つまりCTなどの画像検査,内視鏡検査,血液検査では器質的異常が指摘できないものを指す1)。FGIDは2006年のDDW*1にてローマⅢ基準としてローマⅡを改訂する形で提唱されたもので,そのなかにFDが含まれる(表1)1〜4)。FDはさらに,胃もたれや早期上腹部膨満感が中心の食後愁訴症候群postprandial distress syndrome(PDS)と上腹部痛が中心の心窩部痛症候群epigastric pain syndrome(EPS)に細分類される。FDは,日本では2013年3月に保険病名として収載された(「機能性ディスペプシア」)。
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