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骨粗鬆症は,骨密度bone mineral density(BMD)が低くなり,骨が病的に脆くなった状態で,椎体,前腕骨(橈骨遠位端),大腿骨近位部などに骨折のリスクが増大する。骨質(微細構造,骨代謝回転,微小骨折,石灰化)とBMDが骨強度の要素であり,骨質の劣化と,主としてBMDの低下が骨強度の低下を引き起こし,骨折の頻度が増すと考えられる1)。
骨粗鬆症は,加齢,性,家族歴などの除去できないリスク因子と,運動習慣,食事摂取などに関する改善可能な因子により発症する慢性疾患で,改善可能な因子を早期に取り除くことが重要である1)。日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味する,平均寿命と健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されない期間)の差は,平成22年で男性9.13歳,女性12.68歳2)であり,介護が必要となった場合,骨粗鬆症が原因と考えられる運動器疾患に起因した割合は,女性の場合44%(骨折・転倒15%,関節疾患14%,高齢による衰弱15%),男性の場合20%(骨折・転倒6%,関節疾患4%,高齢による衰弱10%)3)とされる。対照群と比較して,大腿骨骨折後3か月で女性は5倍,男性は8倍の死亡率上昇があり,骨折後2年以上だと女性は2倍,男性は2.5倍の死亡率上昇を認めたメタ解析4)や,大腿骨骨折がなくても骨粗鬆症(BMD低下)の生命予後へ影響があるとする報告5)や,骨粗鬆症群は骨量減少群よりも,動脈硬化に起因する血管イベントの発症リスクが高くなるという報告6)がある。すなわち,骨粗鬆症はクオリティオブライフ(QOL)の低下と死亡率上昇に関係するため,予防と治療が重要と考えられている1)。
日本では,平成7年度から老人保健法,平成20年度からは健康増進法第19条の2に基づき,市町村が実施する事業として,40歳から5歳刻みで70歳までの女性に骨粗鬆症検診が実施されている。目的は早期に骨量減少者を発見し,骨粗鬆症を予防することで,項目は問診(運動習慣,食生活の内容などを聴取)と骨量測定である1)。しかし,実施市町村は61%前後7)であり,受診率は都道府県別では1%を切る地域から14%を超える地域まで,全国平均4%前後にとどまっている8)。したがって,ホスピタリスト,プライマリケア医が入院や外来で骨粗鬆症のスクリーニングについて考慮すべきと考える。
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