特集 酸素療法
巻頭言:“空気”のように当たり前だが極めて重要な存在:“酸素”
江木 盛時
1
Moritoki EGI
1
1神戸大学医学部附属病院 麻酔科
pp.255-256
発行日 2018年4月1日
Published Date 2018/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200499
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ちょうど20歳代の終わりに,私はオーストラリアに留学していて,家族で西オーストラリアのパースに旅行に行きました。西オーストラリアは,奇岩群のピナクルズ,貝殻だけでできた真っ白なシェルビーチやイルカで有名なモンキーマイアなど興味深い場所が多くあります。それらの土地を観光しつつ,パースからレンタカーで約800km北上し,世界遺産となっているシャーク湾を訪れました。そのシャーク湾で私たちはストロマトライトの群生を見ました。観光看板によると,現生するストロマトライトがみられるのは極めてまれで,その学術的価値も高いようでしたが,我々以外に観光客はいませんでした。静かな海面にごつごつとした黒い岩のようなストロマトライトが無数に突き出ている姿を今でも覚えています。
ストロマトライトは,シアノバクテリア(藍色細菌)と堆積物が重なり合うようにしてできたもののようです。私は太古の歴史に詳しくはありませんが,この地球上で光合成を始めた生物のなかでも最古のものの1つと考えられているようです。地球が誕生した当初は地球上には酸素はほとんどなかったようですが,生物の進化の過程のなかで,光合成を行うことで生命を維持する生物が誕生し,徐々に地球上の酸素濃度は高くなっていったとされています。酸素濃度は,地質時代で言えば石炭紀(その時代の地層からたくさんの石炭が出てくる。多くの森林があったと予想されている)の頃には35%まで増加し,その後の変動のあとに現在の約21%に落ち着いたという報告もあります。
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