特集 中毒
Part 3 中毒の集中治療
9.一酸化炭素中毒とシアン中毒
小澤 昌子
1
Akiko OZAWA
1
1福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター
pp.749-758
発行日 2017年7月1日
Published Date 2017/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200435
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一酸化炭素中毒による死亡数は年々減少傾向にあるものの,いまだ急性中毒死亡原因の第1位であり,平成27年における死者は約2200人と全急性中毒死亡の半数以上を占めている1)。自殺や不慮の事故によるものが主であり,自殺遂行手段としては縊頸に次いで多い2)。急性一酸化炭素中毒を発症しても,心停止まで至らずに診療を受けられた場合の生命予後は悪くない。臨床的には神経学的後遺症が問題となり,その予防的意義を含めた急性期の治療法として高圧酸素療法hyperbaric oxygen therapy(HBO)が広く行われているが,その適応および有効性についてのコンセンサスはまだ得られていない。
本稿では,一酸化炭素中毒の概要のほか,HBOの有効性に関する文献を取り上げ,神経学的後遺症,すなわち遷延型・間欠型一酸化炭素中毒に関する知見を紹介する。
Summary
●一酸化炭素による死亡は年々減少傾向にあるが,急性中毒死亡原因の第1位である。
●一酸化炭素中毒では,2日〜4週間の無症状期間を経て,遅発性脳症を発症することがある。
●1週間以内のMRIで淡蒼球や大脳白質に異常信号を認めることがあり,遅発性脳症の発症予測に用いられる。
●高圧酸素療法には,明らかなエビデンスは得られていない。
●遅発性脳症の発症は神経細胞傷害と脱髄性変化が原因と考えられている。
●住宅などの火災では,一酸化炭素だけではなくシアン化水素が発生する。
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