社会の動向
人命を鴻毛の軽きに
長谷川 泉
1
1医学書院編集部
pp.46-47
発行日 1959年7月1日
Published Date 1959/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201719
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近頃の世相を見ていると,まことに人命を軽視する風潮が盛んである.早い話が,テレビを1週間見ていたらよい,いや1日テレビを見ていたらよい,ほとんど殺人の出てこないことはないと言つても過言ではない.しかし,それが人気番組と言われるものについて甚だしいのである.たとえば,「私だけが知つている」「日真名氏飛び出す」「ハイウエイ・パトロール」「このなぞは私が解く」「ハリウツド劇場」「モーガン警部」「捜査メモ」「ヒツチコツック劇場」「ローン・レインジヤー」「ダイヤル110番」「事件記者」「特種をにがすな」といった具合である.恐怖の火曜,殺しの土曜とは,まことによく言つたものである.まことに,刺激の強い話である.新聞を開いても,毎日のように殺人の記事がある.結果の報道だけでなしに,テレビの場合には,リアルなアケシヨンとして,そのようなむごたらしい殺人や,殺戮の場面,狂暴なふるまいが写し出されるのであるから,いやはやまことに刺激の強い話である.
警官に対する暴行や殺傷事件がふえている.警察官には,特別に,そのような事態に対処する訓練をしなおさなければならない実情にあるという.これは,まことに山々しい問題である.
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