巻頭言
急性肺塞栓症への想い
中野 赳
1
1三重大学医学部第1内科
pp.3
発行日 1997年1月15日
Published Date 1997/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901395
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急性肺塞栓症は急性心筋梗塞,大動脈解離などとともに致死的循環器救急疾患として位置づけられるが,その臨床的認識,研究が遅れている疾患である.その原因の1つは,本症は他の循環器疾患と異なり,唯一静脈系を病因の場とすることである.従来,ほとんどの循環器医にとって静脈は心臓に対するpreloadの場としての位置づけしかなかったからである.他の原因としては,本症の病像が循環器,呼吸器の両側面があり,そのことから両専門科の狭間にあったことにもよる.
私の肺塞栓症へのふれあいは25年前にさかのぼる.米国でレジデントをしていた時,一般的であった本症が,本邦ではほとんど診断されていなかったことより,本邦における肺塞栓症の頻度を剖検例より調査したことから始まる.その結果,わが国においても決して少ない疾患ではないという事実が,私を肺塞栓症の研究に着手せしめた.
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