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重篤な循環不全や治療に反応しない循環不全の患者において,心エコーは病変や病態を把握し,その結果から直ちに治療方針を決定するPoint-of-Care Ultrasonographyとしての役割を担う。一般的には経胸壁心エコーtransthoracic echocardiography(TTE)が第一に選択されることが多いが,治療方針を左右するような診断情報がTTEでは得られない場合に,経食道心エコーtransesophageal echocardiography(TEE)が用いられる1)。TEEでは,プローブ(探触子)(図1)を食道に挿入し,心臓を背側から走査する。TTEと同様に心臓の断面像を描出し,心腔内や血管の血流を測定できる。多くの装置で走査面を0°から180°まで回転させることができるため,心臓のさまざまな断面像を得ることが可能である。最近ではリアルタイムで三次元画像が取得できる装置も多く使われるようになってきている。
TEEは,米国の集中治療医学会が推奨する集中治療医が習得すべきであるとされる基本的な心エコーのスキルには含まれておらず,応用レベルのトレーニングで習得するものとされている2〜4)。また,TEEの施行も応用レベルのトレーニングを終了した者によって行われることが推奨されている4)。しかしながら,術中麻酔と同様に集中治療領域においても,TEEの有用性は確立されている。さらにTTEよりも検者の技術への依存が少なく,空間分解能が優れているというTEEの利点を考慮すれば,集中治療医が基本的なTEEのスキルを習得する意義はあると考えられる5)。本稿では,TEEのプローブの挿入法や操作法,合併症,基本的な心機能評価に必要な断面,適応について解説する。
Summary
●集中治療における経食道心エコーの適応となる患者は,循環不全や呼吸不全を伴い気管挿管・人工呼吸器管理下であることが多い。
●経食道心エコーは無侵襲ではない。合併症の発生頻度は高くはないが合併症を起こさないよう愛護的にプローブを操作する。
●基本的な心機能の評価には多くの断面は不要である。まずは基本の11断面をマスターする。
●集中治療での経食道心エコーの適応は,治療方針を変え得るような情報が経胸壁心エコーでは得られない場合である。経食道心エコーと経胸壁心エコーのそれぞれの強みと弱みを理解し使い分ける。
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