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救急や集中治療の現場では,刻々と変化する病態に対応して治療を軌道修正する必要があり,タイムリーな病態把握が必要とされている。非侵襲的にこれを評価する場合,超音波診断が有用であることは言うまでもない。特に,近年ポータブル型やポケット型の超音波診断装置が利用でき,現場での超音波検査非専門家にとっても,超音波診断が身近かつ必須のものとなりつつある。
しかし,これまで循環器領域の超音波診断に携わっていないと,何となく難しそうであると感じたり,下手に手を出して誤った診断をしてしまうことへの危惧があることは否めない。このような背景から,循環器領域において簡易的な超音波診断のプロトコルが提唱されている。すでに腹部外傷領域においてはFAST*1が知られているが,循環器領域においてもFoCUS(focused cardiac ultrasound)1)あるいはFATE(focus assessed transthoracic echo)2)と呼ばれるプロトコルが提唱されている。
簡易的な循環器領域の超音波検査では,FATEのほうがやや歴史は古く,元来非心臓手術の術前リスク評価として,麻酔科領域から提唱された。非心臓手術前にFATEで検査することにより,麻酔リスクの低減につながった3)とする報告など,簡易心エコーの有用性が示されている。FoCUSは,集中治療領域から提唱されており,それぞれバックグラウンドが異なる。しかし,FoCUSもFATEもほぼ同じ音響窓を用い,評価法も同等である。したがって,集中治療や救急の現場ではどちらのプロトコルを用いてもよく,大きな差異は生じないものと考える。ただし,評価項目としてFATEにあってFoCUSにないものとしては,肺・胸膜の評価がある(表1)。肺うっ血の有無を診断するうえで簡易かつ有効であり確認しておきたい。FoCUS,FATEともにドプラ法による圧評価が含まれていないが,実臨床で必要とされることが多く,マスターしておくことが望ましい。
Summary
●簡易心エコーのプロトコルにはFoCUSとFATEがあり,両者はほぼ同じである。
●ドプラによる圧評価については,三尖弁逆流の流速など速い流速であれば連続波,左室流入血流速度など遅い流速であればパルス波を用いると理解しておくとよい。
●大動脈弁閉鎖不全症は心エコーでの評価が最も困難であり,特に身体所見が重要となる。
●僧帽弁逆流は原因が重要であり,まずは二次性僧帽弁逆流を診断できるようにする。
●調整により画質は大きく向上するが,そのための最も効果的な方法は,呼吸の調整である。
●検査件数をこなし,健常例を数多く経験し,同じ画像で自分の評価と熟練者の評価を比較することが,上達のポイントである。
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