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てんかん重積状態status epilepticus(SE)の治療は,ガイドラインなどのプロトコルに準拠して行ったほうが,発作停止が得られやすいことが知られている1)。Sauroら2)のてんかんに関する各国のガイドラインの現状を調べたシステマチックレビューによれば,1985〜2014年にSEに関するガイドラインが7つ発表されている。そのなかで,2010年以降に発表された成人の治療に関するものは,2010年の欧州神経学会(EFNS*1)によるもの3)と,2012年の北米神経集中治療学会(NCS*2)によるもの4)の2つがある。2016年に米国てんかん学会(AES*3)からも治療に関するガイドライン5)が発表されたため,本稿ではこれら3つのガイドラインを参照し,成人のSEに対する治療方針について説明する(一部,薬物など日本の現状に即した点については日本神経学会による『2012年度てんかん治療ガイドライン2010追補版6)』も参照した)。
なお,SEはその症候から,痙攣性てんかん重積状態 convulsive SE(CSE)と非痙攣性てんかん重積状態nonconvulsive SE(NCSE)の2つに大別されるが,上記の3つのガイドラインの主な対象はCSEである(ミニコラム1)。EFNSのガイドライン3)には,複雑部分発作重積状態 complex partial status epilepticus(CPSE)とsubtle SE(ミニコラム2)に関する記載も含まれている。NCSのガイドライン4)は,subtle SEも対象としているが,いずれもCSEに準じるとされるのみで,その根拠となるエビデンスは乏しい。集中治療医がICUにおいて,治療対象とするのはCSEとsubtle SEであり,本稿も以下ではこれらに対する治療方針を述べる。
Summary
●てんかん重積状態の治療目標は,できるだけ早く臨床上および脳波上の発作活動を停止させることである。
●発作を停止させる治療に並行して原因疾患の検索も行う必要があるが,診断のための検査によって治療が妨げられてはならない。
●てんかん重積状態の治療は,プロトコルに準拠して行ったほうが発作の停止を得やすい。
●initial therapyとしては,十分量のベンゾジアゼピン系薬を単回投与する。
●second therapy以降の最良の治療法に関しては,エビデンスが乏しいが,欧米のガイドラインでは,second therapyとしてフェニトイン/ホスフェニトインもしくはレベチラセタムの静注(これらが,使用できない場合はフェノバルビタール静注)が,third therapyとして静脈麻酔薬の持続投与もしくはsecond therapyを繰り返すことが推奨されている。
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