特集 ICUにおける神経内科
Part 2 中枢神経疾患
6. 自己免疫性脳炎—治療可能な脳炎の臨床像と治療
形岡 博史
1
Hiroshi KATAOKA
1
1奈良県立医科大学 神経内科
pp.797-805
発行日 2016年10月1日
Published Date 2016/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200322
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従来,脳炎患者の多くは病因を確定することができないまま治療が進められていた。しかし,卵巣奇形腫を合併する脳炎など,神経細胞膜表面抗原を標的とする抗体が介在して発症する脳炎が報告されて以降,免疫療法が有効である自己免疫性脳炎の存在が確立された。
本稿では,自己免疫性脳炎,特に神経細胞膜表面抗原に対する抗体が介在する自己免疫性脳炎の臨床像について概説する。
Summary
●神経細胞膜表面抗原(受容体・シナプスタンパク)を標的とする抗体が介在する自己免疫性脳炎の多くが,精神症状や意識障害,痙攣を呈する。
●抗NMDA受容体脳炎では9〜55%に,抗LGI1抗体陽性脳炎では5〜10%に腫瘍が合併する。また,抗DPPX抗体陽性脳炎や抗glycine受容体抗体陽性例では腫瘍の合併はまれである。
●臨床経過は4つの病期に分かれ,併発する腫瘍の切除と免疫療法を行う。
●神経細胞内抗原を標的とする抗体が介在する自己免疫性脳炎には,抗Hu抗体や抗Ma-2抗体陽性脳炎や橋本脳症がある。
●自己免疫性脳炎の診断におけるアルゴリズムでは,“辺縁系脳炎”と“抗NMDA受容体脳炎”がkeywordであると考えている。
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