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妊婦における敗血症sepsisの有病率は低い。先進国における妊婦の敗血症発生率は分娩全体の0.002〜0.01%であり,全敗血症症例に占める妊娠合併敗血症の割合は0.3〜0.6%1)と報告されている。Pollockら2)によるシステマチックレビューでは,周産期女性のICU入室理由のうち,敗血症によるものは5%程度であった。しかし,妊婦の生理学的変化の問題などから妊婦の敗血症は見逃されやすく,重症化することも少なくない。英国の妊産婦死亡を登録・評価する機構であるCentre for Maternal and Child Enquiries(CMACE)3)は2006〜2008年の3年間における周産期死亡の死因のトップが敗血症であったと発表した。この結果を受け,Royal College of Obstetricians and Gynaecologists(RCOG)は,2012年4月に妊娠中および産後の敗血症の早期認知とそのマネジメントを示すことに主眼をおいたGreen-top Guideline No. 64a4)および64b5)をまとめた。
RCOGは同ガイドラインの中でSurviving Sepsis Campaign Guidelines(SSCG)に倣った敗血症のマネジメントを推奨している。しかし,当然ながら敗血症診療における現在知られているエビデンスは非妊娠患者に関してのデータであり,敗血症の治療に関して妊婦を対象としたエビデンスはごく限られている。一般的な敗血症診療を妊婦に適用する場合は,妊婦特有の生理学的変化や胎児への影響に配慮する必要がある。本稿では,一般的な敗血症診療を妊婦に適用する場合の注意点について検討し,また周産期に特に注意すべき感染症の病態についても概説する。
Summary
●妊娠中の敗血症に関するエビデンスは限られている。
●敗血症マネジメントの原則は妊婦でも同様である。
●一般患者の敗血症診断においてもSIRS基準は使用されなくなっており,妊娠中の生理学的変化が生じている妊婦での信憑性はさらに低い。
●劇症型GAS感染症は妊産婦死亡の主要な原因である。
●胎児のモニタリングや急速遂娩の必要性に関して産婦人科医にコンサルテーションを行う。
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