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死戦期帝王切開perimortem cesarean delivery(PMCD)は,心停止妊婦を蘇生する手段の1つであり,児を娩出させることで循環血流量を増加させ,母体蘇生率を上昇させる一助となるといわれている。PMCDはAHA*1の蘇生ガイドラインにも掲載されており,2015年改訂版1)では推奨の程度が強くなっている。妊娠中の心停止は1/25000以下の発生率で2)あり,実際の臨床においてPMCDを施行することは極めてまれである。しかし,妊婦の心停止に遭遇すれば,ガイドラインの推奨からも蘇生処置として考慮すべきであり,ここにジレンマがある。
りんくう総合医療センター(以下,当院)では,最重症(心停止が切迫,外傷,高度意識障害)の妊産褥婦を救命救急センターと協力して年間20例弱受け入れているが,この3年間で2例の院外心停止妊婦の搬入を受け,いずれもPMCDを施行している。我が国で2015年12月現在報告されている6件のPMCDのうち,当院ではその1/3を経験していることになる。1例は母児ともに失い,1例は後遺症はあるものの母児ともに軽快退院となった。
本コラムでは「究極の産科的蘇生術」であるPMCDを解説するとともに,外傷初期診療プロトコルを用いた重症妊産褥婦の集中治療戦略について述べる。
Summary
●死戦期帝王切開(PMCD)は心停止妊婦の蘇生率を上げ,ガイドラインでも推奨されている。
●妊婦の心停止率は低く,PMCDを施行する機会はまれである。
●PMCDを施行した2症例の経験から,重症妊産褥婦は外傷患者に類似した対応が求められるため,外傷初期診療プロトコルを用いることが有効だと考えられる。
●心停止妊産褥婦に対しては,PCPS駆動を含めたダメージコントロール戦略の導入が有効だと考えられる。
●PMCD成功のみならず,重症妊産褥婦への対応には,院内であらかじめシミュレーションしておくことが重要である。
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