特集 心臓血管外科 後編
術後合併症
3.不整脈—細やかな対応が求められる術後不整脈の予防と治療
川堀 真志
1
,
金子 剛士
1
Masashi KAWABORI
1
,
Tsuyoshi KANEKO
1
1Division of Cardiac Surgery, Brigham and Women's Hospital, Harvard Medical School
pp.137-150
発行日 2016年1月1日
Published Date 2016/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200247
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術後不整脈は,開心術後最も頻度の高い合併症であり,不整脈の予防と治療は,周術期管理のなかで最も重要なものともいえる。最も代表的な術後心房細動postoperative atrial fibrillation(POAF)は,30〜60%1〜3)と高率に発症する。POAFは回復を遅らせるだけでなく,時には血行動態の破綻をきたし緊急対応を要する。また,脳梗塞などの重大な二次的合併症の引き金となり,さらに塞栓症予防の抗凝固療法は術後出血などの合併症を起こし得るため,臨床医に細やかな対応が求められるやっかいな合併症である。このPOAFに対しては,各学会がガイドラインを発表している。それらをベースに,患者の背景・病態を把握したうえでの,テーラーメイドな治療が必要である。
また,Brigham and Women's Hospital(以下,当施設)のArankiら4)は,POAFは入院日数を延長し,入院費用を患者1人当たり10,000ドル以上増加させるとしている。不整脈は医療経済の視点からも重要な問題である。
Summary
●患者の高齢化により,術後不整脈の頻度も高くなっている。
●POAFは頻度も高く,他の合併症とのかかわりも強く,アウトカムの低下をきたす。
●血行動態の破綻をきたす術後不整脈には適切な緊急対応が必要であり,術後管理チームが精通していることが必須である。
●POAFガイドラインの根拠となる研究には非開心術のデータも用いられており,種々のバイアスが含まれる。よりPOAFにフォーカスを絞った研究と,最新ガイドラインの把握が今後必要である。
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