特集 PCAS
Part 3 心拍再開後の治療
【コラム】心拍再開後の動脈血酸素分圧,二酸化炭素分圧は予後を左右するか?
毛利 英之
1
,
讃井 將満
1
Hideyuki MOURI
1
,
Masamitsu SANUI
1
1自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔・集中治療部
pp.680-690
発行日 2014年10月1日
Published Date 2014/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200105
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心停止後症候群post cardiac arrest syndrome(PCAS)の病態は,心停止後脳傷害,心停止後心筋機能傷害,全身性虚血再灌流反応,持続的増悪病態からなる1)。脳は心停止時の低酸素による直接の傷害に加えて,虚血再灌流後の過剰な酸素供給によって生じるフリーラジカルによる傷害も付加される。すなわち,自己心拍再開return of spontaneous circulation(ROSC)後は,低酸素血症による傷害を受けたあとに高酸素血症による傷害を受ける危険性をはらんでおり,どちらも回避できるような動脈血酸素分圧(PaO2)の調整が必要である。また,動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)に着目しても,PaCO2は脳血流を調節する重要な因子であるため,人工呼吸器で換気を調節することは生理的に適った管理であるといえる。
本稿では,ROSC後のPaO2,PaCO2をどのように維持するべきか,最近の知見を中心に,これらの疑問に答えていきたい。
Summary
●ROSC後のPaO2,PaCO2をどのように管理すべきかに関する質の高い研究は少ない。
●ROSC後の高酸素血症は,生理学的にも臨床的にも優位な点は示されておらず,むしろ有害である可能性がある。
●同様に,ROSC後の低二酸化炭素血症も,生理学的にも臨床的にも有利な点はなく,むしろ有害である可能性が高い。
●高二酸化炭素血症が神経学的予後を改善させる可能性が示されているが,どの程度まで許容されるか不明である。
●現段階では,各ガイドラインの記載を尊重し,SaO2を94〜98%に,PaCO2を40mmHg程度に維持するのが妥当である。
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