- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
ベンゾジアゼピン系鎮静薬として,日本のICUではミダゾラムが使用されることが多いが,近年の傾向としてミダゾラムを使用しない医師が増えてきているように思う。
残念ながら日本の疫学データは存在せず,日本の実情を述べることはできないため,海外の疫学データを参照してみる。ドイツの200以上の病院を対象に,2002年と2006年の鎮痛鎮静薬の使用割合を比較した調査1)では,ミダゾラムの使用量が入室24時間以内では45.9%から34.6%に減少し,入室後24~72時間でも77.3%から62.2%に減少した。一方,代替の鎮静薬として,プロポフォールの使用量が増加していた。また,オーストラリア,ニュージーランドで2006~2007年の4か月間に行った,医師と看護師を対象にしたアンケート調査2)では,鎮静薬として何を選択するかという問いに対して,半数以上の患者にミダゾラムを使用すると答えた人は72.3%,同じくプロポフォールを使用すると答えた人は77.7%であり,プロポフォールの使用頻度のほうが若干高かった。
ベンゾジアゼピンを主体にした鎮静は,人工呼吸器装着期間の延長,ICU滞在期間の延長,譫妄のリスクになるといった,臨床アウトカムを悪化させるイメージがあるが,そのイメージにはどのくらい根拠があるのだろうか?ベンゾジアゼピンは安価で,血行動態の悪い患者でも使いやすく,捨てがたい。
そこで本コラムでは,ベンゾジアゼピンの立ち位置を確認し,本当にベンゾジアゼピンが悪者なのか考えてみたい。
Summary
●鎮静薬として投与した場合,ベンゾジアゼピンは非ベンゾジアゼピンに比べ,ICU滞在期間を延長させ,人工呼吸器装着期間もおそらく延長させる。
●譫妄の発症率,死亡率,医療コストに関しては,どちらが好ましいのかはっきりした結論はない。
●鎮静薬の種類ではなく,投与方法が臨床アウトカムに関係している可能性がある。
Copyright © 2014, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.