特集 疼痛・興奮・譫妄
7.デクスメデトミジンはそんなによいのか?―その有用性に根拠はあるか
岩井 健一
1
,
讃井 將満
2
Kenichi IWAI
1
,
Masamitsu SANUI
2
1東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 麻酔部
2自治医科大学附属さいたま医療センター 集中治療部
pp.51-58
発行日 2014年1月1日
Published Date 2014/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100618
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デクスメデトミジンは,従来頻用されてきたミダゾラム・プロポフォールと比較して,副作用として呼吸抑制がないうえ,患者アウトカムとして譫妄発症頻度が低く,人工呼吸器管理期間が短縮するなどの優位性があることから,本邦でも広く用いられている。実際,現代的な鎮痛主体の鎮静,浅い鎮静,早期の理学療法を目的とした鎮静を達成するために合理的な薬物であるのは確かである。しかし,薬理学的な有用性は,質の高い臨床研究によって臨床的効果が証明されて,はじめて“真に有用な”薬物たり得る。本稿では,今までに報告された大規模研究を改めて振り返り,「デクスメデトミジンは果たしてそんなによいのか?」という疑問に対する標準的回答を得たい。
Summary
●デクスメデトミジンはα2作動性鎮静薬であり,鎮静作用のみならず,鎮痛作用,血圧上昇作用,血圧低下作用,徐脈など,多彩な薬理作用を有している。特に,投与中の合併症として徐脈の出現に注意するべきである。
●デクスメデトミジンによる鎮静は,ミダゾラム・プロポフォールによる鎮静と比較して,譫妄発症頻度を減少させ,人工呼吸器管理期間を短縮するが,ICU滞在期間,病院滞在期間,死亡率,長期予後など,重要な患者転帰における優位性が証明されているわけではない。
●現在企画されている大規模研究である「SPICE Ⅲ RCT」は,デクスメデトミジンを用いた鎮静の優位性を検討するうえで有用な情報をもたらすと予想され,その結果が待たれる。
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