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重症呼吸不全に対する治療方法の1つとして体外式膜型人工肺extracorporeal membrane oxygenation (ECMO)が考慮される1)。重症呼吸不全に対するECMOを考慮する最大の目的は,人工呼吸器関連肺傷害ventilator induced lung injury (VILI)2)を防ぐために“lung rest(肺を休ませる)”を行うことにある。人工呼吸器の設定をVILIが生じないように最小限として,自己肺の機能が回復するまで酸素化と換気の補助を行うことがECMOの役割である。しかし,ECMOはあくまでも侵襲的かつ非生理的な人工臓器の一種による補助であるために,患者本人に対して身体的負荷がかかる。また,高額なシステムであるために医療経済的にも必ずしも容易に選択できる手段ではない。ECMOを使用する医療従事者はそのメリット・デメリットを理解し,エビデンスを正しく評価したうえで,適切な患者に適用しなければならない。
本稿では重症呼吸不全に対するECMOの歴史を紹介し,これまでに報告されているエビデンス・適応について提示する。
Summary
●respiratory ECMOの有効性を検証したRCTは少なく,エビデンスはいまだ明らかではない。
●H1N1インフルエンザを含むさまざまな原因によるARDSだけでなく,肺移植までのブリッジ,重症喘息,外傷後呼吸不全に対してのECMO施行も有効かもしれない。
●respiratory ECMOの有効性を評価する際には,ARDSそのものに対する治療,ECMO機器の進歩などに注意して評価する必要がある。
●respiratory ECMOの有効性を評価する新たなRCTであるEOLIA trialの結果が待たれる。
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