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venovenous extracorporeal membrane oxygenation(VV ECMO)は,重症呼吸不全患者において,従来の人工呼吸器管理では生命が維持できなくなった状態,または,肺に不可逆的な傷害を与えてしまうほどの強い人工呼吸器設定にせざるを得ない場合に適応となる。ただし,そのサポートは一時的であり,およそ2週間~2か月までとすべきとされている。通常,回復までの生命維持を目的に使用されるため,回復が見込めない呼吸不全に対しては適応にならないが,最近では肺移植までのブリッジを目的とした使用1)も報告されてきている。
歴史的には,respiratory ECMOの有用性は1979年のZapolら2)と1994年のMorrisら3)の無作為化試験では否定されていたが,2009年のCESAR*1 trial4)で初めて証明され,再び脚光を浴びることとなった。かつて否定された研究が最近になって肯定された大きな理由は,ECMOデバイスと管理法の進歩にほかならない。特に管理法については,いつ,どんな合併症が起ころうともすぐに対応できるよう,日頃からスタッフをトレーニングしておくことが成績向上に寄与している,とKarolinska大学ECMOセンターのPalmerは述べている5)。
一方,本邦ではECMO患者の搬送システムはなく,専門のトレーニングを受けたスタッフは皆無である。また,最も多く使用されているデバイスは,欧米諸国で使用されているものと比較し,機器関連の合併症が多く,回路交換も頻回となっている6)。
ECMOを導入することは,どこでも誰でもできる。ただ,導入された患者を救うためには,ECMOの生理学と管理法を十分に熟知した医療チームが必要である。本稿のみでECMOを理解するには不十分である。ただ,集中治療を志す若き医師にとって,今後ECMOにかかわることを避けては通れない。本稿が入門書となってくれれば幸いである。
なお,ECMOの管理法は十分なエビデンスが確立している分野ではない。Extracorporeal Life Support Organization(ELSO)ガイドライン7)でさえ,ほとんどがエキスパートコンセンサスで成り立っている。本稿はELSOガイドラインをもとに,最近の学会での知見を加えて記載した。参考文献は基本的な管理法の根拠となり得る重要なものだけを厳選した。
Summary
●十分な血流量が得られるように,カニューレサイズ・回路構成を考える。
●ECMO導入後の人工呼吸器設定は“lung rest”とする。
●SaO2は80%を許容する。
●回路は全身モニタリングし,異常があれば,適切に対処する。
●本邦においては患者の集約・搬送など,改善すべき問題点がある。
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