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いわゆる経皮的心肺補助percutaneous cardiopulmonary support(PCPS)を含む,広義の体外式膜型人工肺extracorporeal membrane oxygenation(ECMO)は,今や心不全・呼吸不全領域にとどまらず,救命救急領域にとっても欠かせない存在になっている。しかし,各施設でのECMO使用状況はさまざまであり,まれにしか使用しない施設も多い。それ故トラブルの発生も決してゼロではなく,ひとたびトラブルが発生すると大きな事故につながる可能性も高いことから,安全管理体制の確立やスタッフ教育が重要である。日本体外循環技術医学会(JaSECT)では,全国の医療機関を対象とし,インシデント・アクシデントについての調査1)を実施した。回答を得た357施設で,2009年,2010年に施行された補助循環(ECMO,PCPS)症例(5850例)におけるインシデント・アクシデントの発生率は6.3%(369件/5850例)と報告されている。2年間でインシデントの「経験がない」施設は171施設(48%)にとどまっている。
本稿では,補助循環中に発生する主な機器トラブルを取り上げ,予防策と発生時の対策,長期補助循環に伴う医療材料の機能低下時の対応について述べる。
Summary
●補助循環は緊急性が高く,また,長期間管理となることから,チーム医療を実践する必要がある。医師,看護師に加え,すべてのコメディカルの機能が必要である。
●補助循環にかかわる医療スタッフには,マニュアルの作成,チェックリストの活用,シミュレーショントレーニングの実施など,安全管理体制,教育体制の構築が求められる。
●機器のトラブルを未然に防ぐため,日常点検・定期点検を実施する必要がある。
●補助循環を安全に施行するためには,始業点検・開始時点検・稼働中点検を実施する必要がある。
●補助循環施行中の機器の機能低下に備えた対策,すなわち,機能代替装置の準備,交換方法の検討,機能低下を検知するためのモニタリングアラームの設置などが必要である。
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