特集 PICU
9.PICUと広域搬送―我が国の現状と今後の展望
志賀 一博
1
,
宮田 靖志
2
Kazuhiro SHIGA
1
,
Yasushi MIYATA
2
1聖隷三方原病院 救命救急センター 救急科
2北海道大学病院 地域医療指導医支援センター/卒後臨床研修センター
pp.575-580
発行日 2012年7月1日
Published Date 2012/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100451
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欧米では,小児集中治療室(PICU)に重症小児患者を集約して治療を行うことの有効性が数多く報告されている1,2)。特に外傷に関しては,小児外傷センターで治療を行うことによって,成人外傷センターでの治療より予後が改善することが示されている3)。重症小児患者の広域搬送例として,体外式膜型人工肺extracorporeal membrane oxygenation(ECMO)管理下の搬送実績も報告されている4,5)。
これに対して我が国では,重症小児患者がPICUに集約されているとは言い難く,問題点も多い。例えば,多くの小児科医の診療対象は主に一次および二次救急患者であり,重症化した三次救急患者の対応は日常診療の延長線上で行われるため,小児科医の負担は非常に大きく,三次救急診療に専念することが難しい。一方で,多くの集中治療医の診療対象は主に成人の三次救急患者であり,小児三次救急患者に対しての対応は,ソフト面でもハード面でも十分とは言い難い。さらに,重症小児患者の受け皿となるPICUが不足していることや,PICUへの搬送方法が確立していないことも問題となる。しかし昨今,重症小児患者を取り扱う搬送専門チームの有効性6)や,PICUへの広域搬送システムに関しての報告が散見されるようになっている7~11)。
本稿ではまず,欧米やオーストラリアのPICUの現状を紹介する。次に,近年の国内の状況を紹介する。最後にこれらをふまえて,我が国における今後のPICUと小児広域搬送の展望に関して私見を述べる。
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