特集 End-of-life
1.日本の現状と取り組み―終末期医療に関する取り組みは多くの学会との協働が必要
氏家 良人
1,2
UJIKE, Yoshihito
1,2
1岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 救急医学講座
2日本集中治療医学会倫理委員会
pp.1-6
発行日 2012年1月1日
Published Date 2012/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100374
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ICUにおける人工呼吸管理,機械的または薬物的循環管理,高カロリー輸液や経腸栄養による栄養管理など,重症患者管理の進歩は,終末期の患者であっても比較的長期にわたる延命を可能とした。しかし,DPCを導入するなど,医療経済政策は入院日数の短縮を求め,急性期病院における長期にわたる入院は困難となってきている。さらに,このような終末期患者を受け入れる後方病院,施設には限りがある。
一方,終末期に至ったときに自分がどのような医療を希望するのか,事前に意思表示をしている患者は少ない。患者が若ければ,家族も終末期の状態を受け入れられず,“奇跡”が起こるのではないかという気持ちがあり,多くの場合はできるだけ長く生きてほしいと望む。80歳を超える高齢者の終末期患者であっても,同様のことがしばしばみられる。
このような状況で,終末期医療はどうあるべきか,どうしなければならないのかということは,ICUで働く臨床医を悩ませ,臨床現場では大きな問題となっている。2006年に日本集中治療医学会1),2007年に日本救急医学会2)が終末期医療における“勧告”,“提言(ガイドライン)”を相次いで発表し,2007~2009年までに厚生労働省3),日本医師会4),日本学術会議5),全日本病院協会6)なども,治療決定プロセスのガイドライン,終末期医療ガイドラインなどを発表している。さらに,2010年には日本循環器学会7)が循環器疾患の末期医療に関する提言を発表した。
ここでは,日本集中治療医学会のこれまでの取り組み,他のガイドラインとの比較,今後の方針,新たな取り組みなどを解説する。
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