特集 急性心不全
10.急性心不全のさまざまな病態―(3)収縮機能が保たれている急性心不全
永井 利幸
1
,
香坂 俊
1
Toshiyuki NAGAI
1
,
Shun KOHSAKA
1
1慶應義塾大学医学部 循環器内科
pp.793-799
発行日 2010年10月1日
Published Date 2010/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100354
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循環器を専門としない医師は,「心不全」イコール「左室収縮機能が悪い(つまり心エコー画像上で心臓の動きが悪い)」という先入観を抱いてはいないだろうか。しかし例えば,①救急外来もしくは集中治療室で患者が突然呼吸困難を訴え,②身体所見からは頸静脈怒張や湿性ラ音など心不全を疑わせ,③胸部単純X線所見上,著しい蝶形像 butterfly shadowが認められ,④患者は人工換気を要するほど重篤な様相でありながら,心エコー検査における左室駆出率(EF)は「正常」といった症例も確実に存在する。
本章では,収縮機能が保たれている急性心不全が存在すること,このタイプの心不全は「電撃性肺水腫」と呼ばれるように極めて重篤な呼吸不全に陥ることが多いこと,意外にも心不全の約20~60%程度をこのタイプが占めており,しかも,予後は収縮不全と大差ないことを説明する。これらを理解し,intensivistとして臆することなく急性心不全診療にあたっていただきたい。
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