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M&Mカンファレンスのすゝめ
医療の現場では,多くの合併症や失敗事例が発生する。ほとんどの医師は,これらを自分の経験として身につけ,日々成長してきたと思う。故事にも「人のふり見てわがふり直せ」や「他山の石,もって玉を攻むべし」のような同様の教えがある。これは,他人の欠点や行動の誤りなどは,とかく目につきやすく気になりやすいものだから,それを指摘して改めるように求めがちである。しかし,自分の欠点や,やり方の誤りについては気がつかず,それを修正することは難しい。そこで,他人のことを自分の鏡として参考とし,他人をとがめるまえに,自分を磨くことに利用しようという教えである。このような教えがある一方,我々日本人にはいわゆる「恥の文化」があり,自分の失敗や欠点をさらけ出すことに強い抵抗がある。合併症や失敗事例を体系づけて討論することは日本の医学教育のなかではほとんど行われてこなかった。
一方米国では,1900年にMassachusetts General HospitalのDr. Ernest Codmanが患者に悪影響を与えた症例を検討することの重要性を唱えたことに始まり,問題を客観的に評価する文化的背景もあり,医学分野のみならず多様な産業分野でも失敗事例を体系づけて評価する分析方法が発展してきた。医学の分野では,Morbidity & Mortality Conference(M&Mカンファレンス)は,重要な医学教育の場として認識され,1983年には,ACGME(Accreditation Council for Graduate Medical Education)が認定レジデントプログラムの条件として,すべての合併症と死亡例を毎週レビューすることを義務づけた。以後,M&Mカンファレンスは,米国医学教育のなかでコアとなり発展し現在に至り,その考え方はカンファレンスの場だけでなくpeer reviewとして日常診療においてもオープンな議論を行う土壌を育てている1~3)。
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