病院史のひとこま
麻酔の事始め
山下 九三夫
1
1国立東京第一病院麻酔科
pp.69
発行日 1973年8月1日
Published Date 1973/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205079
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‘7人の侍’の努力
日本の麻酔科の草分けの人々はその大部分が外科出身であり,しかも胸部外科に関係のある者が多い.最近中国では開胸手術までハリ麻酔で行なうと聞いたとき,われわれはすぐ開胸直後には患者に奇異呼吸が起こり,呼吸困難を訴える者が多いはずだが,いったいこれにどのように対処しているであろうかとの疑問がすぐ思い浮かんでくる.わが国の全身麻酔は実にこの開胸時の苦心から生まれたともいえるのである.
昭和26年の外科学会会長前田和三郎教授は,‘麻酔学の発展は喫緊の要がある’という旨の会長演説をされた.その当時アメリカからサクラード教授が来日し,ハイドブリンク型の全身麻酔器を供覧し,われわれはその精巧さに目をみはったものである.日本の近代麻酔はまさにこの頃開花したともいえよう.昭和27年にはわが国最初の麻酔学講座が東京大学に開設され,山村秀夫教授がその任に当たった.その当時は麻酔を専門とする者も少なく,麻酔は外科のアクセサリーか,アシスタント程度しか考えられず,専門を志す者も少なく,麻酔科の独立は各病院とも遅々として進まなかった.それでも昭和33年には東京で麻酔を専門とする者は20数名となった.
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