特集 不整脈
2.不整脈診療の基本「心筋とイオンチャネル」
不整脈治療に必要な心臓のイオンチャネルの知識
中谷 晴昭
1
Haruaki NAKAYA
1
1千葉大学大学院医学研究院 薬理学
pp.681-689
発行日 2009年10月1日
Published Date 2009/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100144
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■総論
心臓刺激伝導系各部位の活動電位波形と体表面心電図
心臓は自発的に興奮し,その興奮伝導が心臓全体に波及し,収縮拍動を続ける。これは右房と上大静脈の境界部に自発的興奮を繰り返す洞房結節が存在し,その電気的興奮が心房,房室結節,His束,脚,Purkinje線維を経て,作業心室筋に伝導するためである(図1)。
心臓各部位の活動電位波形にはかなりの差異が認められる。洞房結節細胞の活動電位は-50mV前後の比較的浅い膜電位からゆっくりとした脱分極を示す。洞房結節で発生した電気的興奮は心房全体に伝導する。心房筋細胞の活動電位は静止膜電位が-85mV程度であり,そこから比較的速い脱分極速度で脱分極する。心房電気興奮は房室結節に達するが,房室結節細胞の活動電位は洞房結節細胞と同様に比較的浅く,活動電位の立ち上がり速度が遅く,結節内の興奮伝導速度は遅いものとなる。房室結節を通過した興奮伝導は,His束に伝導し,心室中隔を下降しながら右脚および左脚に伝わり,左脚はさらに分岐して前枝と後枝となって,Purkinje線維として心室内面に興奮を伝播する。Purkinje線維では深い最大拡張期電位を示し(-90mV以上),非常に速い立ち上がり速度を示す活動電位が発生するので,その結果,伝導速度も速いものとなる。Purkinje線維を経由した電気的興奮は心室組織全般に素早く興奮を伝播するが,心室筋の活動電位もその静止膜電位は深く(-90mV程度),比較的速い立ち上がり速度を示す。
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