Special feature 国内・海外のガイドラインから読み解く 手術部位感染(SSI)対策の正解
■Perioperative SSI対策における周術期管理の最新エビデンス
❸予防的抗菌薬投与の考え方
-―『術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン』を踏まえて
毛利 靖彦
1
,
小林 美奈子
2
,
楠 正人
3
1独立行政法人三重県立総合医療センター 副院長/外科部長
2防衛医科大学校病院 医療安全・感染対策部 講師
3国立大学法人三重大学大学院医学系研究科 生命医科学専攻臨床医学系講座 消化管・小児外科学 教授
pp.292-296
発行日 2019年10月15日
Published Date 2019/10/15
DOI https://doi.org/10.34426/ict.0000000076
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はじめに
手術部位感染(SSI)は院内感染症の一つで尿路感染症に次いで2番目に多い感染症で,約20%弱を占めるとされ,外科手術症例で発生する最も多い院内感染症である。一度SSIが発生すると,術後在院日数延長や医療費の増加を招く。適切な予防的抗菌薬を使用すれば,SSIを減少させることは明らかである。米国疾病管理予防センター(CDC)より『手術部位感染防止ガイドライン1999』1)が発表されて以来約20年が経過し,我が国でも予防抗菌薬適正使用に対する意識は多くの外科医にとっても高まっていると考えられる。予防的抗菌薬投与に関して4つの原則を留意する必要がある。第1に予防的抗菌薬は,SSIの頻度を減少させることが証明されている手術に使用すること,第2に安全かつ安価で,有効なスペクトルを持つ抗菌薬を使用すること,第3に皮膚切開時に血中および組織内で殺菌濃度に達すること,第4に抗菌薬の治療域濃度を創閉鎖後2~3時間持続させること,の4つである。したがって,予防的抗菌薬使用にあたり留意すべき点としては,選択,投与開始時期および再投与,および投与期間の4点である。本稿では,2016年に発刊された日本化学療法学会と日本外科感染症学会のconsensus statementである『術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン』2)を踏まえて予防的抗菌薬投与の考え方について述べる。
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