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ICUに入室する重症症例に対する急性期の栄養療法は,原疾患の治療の成否にかかわる重要な支持療法の1つであり,病態・病期に応じて最適な栄養療法を行う必要がある。しかし,急性期には原疾患に起因する問題に加え,炎症などの侵襲に応じた生体の防御反応,内分泌・代謝系の異常により,糖,脂肪,タンパクの代謝亢進や,外因性のエネルギーの利用障害などが加わり,外因性エネルギーを大量に投与しても,十分に利用できずに高血糖などの弊害が出現する。ICUに入室する重症症例にはさまざまな背景,病態があり,各症例に対し,栄養療法の開始時期や,投与方法,推奨エネルギー量の算定をはじめとして,病態の変化に柔軟に対応するためには十分な知識と経験が必要である。critical care領域における栄養療法に関しては数多くの臨床研究があり,Society of Critical Care Medicine (SCCM)/American Society for Parenteral and Enteral Nutrition(ASPEN)1)やEuropean Society for Parenteral and Enteral Nutrition(ESPEN)2,3)のガイドライン,さらにはCanadian Clinical Practice Guidelines(CCPG)4)が発表されている。
本稿では,SCCM/ASPENやESPEN,CCPGの三大ガイドラインの至適エネルギー投与量(必要量),開始時期,三大栄養素に関する推奨について比較検討する。さらに,近年,経腸栄養(EN)の重要性が再認識されているが,経腸栄養と静脈栄養(PN)のそれぞれの適応について,免疫調節栄養immune-modulating diet(IMD)の位置づけなどについても述べる。
また,重症患者において高血糖は死亡率と関連していることが広く知られ,血糖コントロールの重要性が知られている。2001年,Van den Bergheらによる強化インスリン療法intensive insulin therapy(IIT)の有効性を示した報告5)以降,多くの臨床研究が行われてきた。血糖コントロールに対するIITについて,現在までの臨床研究の結果を中心に概説する。
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