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■症例
84歳の男性。身長166cm,体重64kg。他院消化器外科で大腸癌と診断され,3年前に直腸低位前方切除術を施行された。経過観察中に骨盤底の局所再発および腹膜播種,肝転移が出現し,積極的がん治療は行わない方針となり,在宅診療を受けていた。骨盤会陰部の痛みが徐々に増悪し医療用麻薬が開始されたが,漸増中に自宅で転倒し,片側大腿骨頸部骨折のため当院に救急搬送された。
がん初発から再発後の現在までの診療経過から,再発がんの進行は比較的緩徐で,生命予後が少なくとも3か月は見込めることを消化器内科医に確認した。受傷前の日常生活動作activities of daily living(ADL)が自立していることや,患者の終末期の希望advance care planning(ACP)を緩和ケアチーム医師および看護師が確認した。これらから,ADLが回復して自立し自宅で生活することが骨折治療ゴールに設定され,整形外科より大腿骨接合術の緊急手術(予定手術時間40分)が申し込まれた。
腫瘍内科出身の緩和ケアチーム医師から,周術期の疼痛管理と併せて会陰部のがん性疼痛管理を依頼された。
■症例経過1
患者は意識清明で,安静臥床であれば骨折部の痛みはほとんどなかった。経口摂取可能で,るい痩は目立たなかった。血圧130/85mmHg,心拍数80bpm,呼吸数12回/min,経皮的末梢動脈血酸素飽和度(SpO2)96%(room air),血液検査では肝逸脱酵素の軽度上昇のみで,そのほかの計測項目に明らかな異常はなかった。
医療用麻薬はオキシコドン乱用防止徐放製剤(オキシコンチン®TR錠)5mg 4錠 分2朝・夕食後,オキシコドン散(オキノーム®散)5mg 1包/回 疼痛時頓用(頓用の服薬間隔は1時間以上,回数制限なし。受傷前は1日2〜3包を頓用)が使用されていた。そのほか,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)ジクロフェナク経皮吸収製剤(ジクトル®テープ)75mg 3枚/日と,オレキシン受容体拮抗薬レンボレキサント(デエビゴ®錠)5mg 1錠を就寝前に服用していた。
手術室の状況から15:00に入室とし,脊髄くも膜下麻酔で管理する方針とした。
さて,あなたなら脊髄くも膜下麻酔では,0.5%ブピバカインのどちらの製剤を使用する?
①高比重製剤
②等比重製剤
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