症例ライブラリー 今日もまたいつもの腹腔鏡
気腹開始後の急激な気道内圧上昇
江花 英朗
1
Hideaki EBANA
1
1福島県立医科大学 麻酔科学講座
キーワード:
気管支痙攣
,
気道内圧上昇
,
高二酸化炭素血症
Keyword:
気管支痙攣
,
気道内圧上昇
,
高二酸化炭素血症
pp.730-733
発行日 2024年8月1日
Published Date 2024/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202990
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■症例
29歳の女性。身長152cm,体重78kg(BMI 33.8)。卵巣囊腫に対する腹腔鏡下卵巣腫瘍摘出術が予定された。幼少期からの気管支喘息の既往があり,現在も吸入薬による治療を継続している。2年ほど前,感冒を契機に喘息発作が生じ近医で加療を受けたが,それ以降は呼吸器症状を自覚することなく生活している。食べ物や薬物に対するアレルギーなし。術前の呼吸機能検査では1秒率(%FEV1.0)62%と低下を認めたが,胸部X線検査,心電図,血液検査では異常所見はみられなかった。入院時の経皮的末梢動脈血酸素飽和度(SpO2)は98%であった。
■麻酔経過
プロポフォール,レミフェンタニル,ロクロニウムで全身麻酔を導入し,セボフルラン,レミフェンタニルで維持を行った。内径7.0mmの気管チューブを挿入し,右口角に20cmで固定した。挿管後の呼吸音は清明で左右差は認めなかった。人工呼吸器は,従量式換気(VCV)で1回換気量400 mL,換気回数10回/min,呼気終末陽圧(PEEP)5cmH2O,吸入酸素濃度(FIO2)40%とし,最高気道内圧は13cmH2Oであった。執刀前に試験的に頭低位としたところ,最高気道内圧は18cmH2Oに上昇したが,SpO2や呼気終末二酸化炭素分圧(PETCO2)に大きな変動は生じなかった。
執刀から間もなく気腹操作が開始され,頭低位としたところで気道内圧が35cmH2Oへと急激に上昇した。1回換気量は100mL程度まで低下し,異常事態を知らせるアラームが手術室内に鳴り響いた。現状でSpO2の低下はみられておらず,90%台を維持している。
さて,あなたならどうする?
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