症例ライブラリー 周術期の高体温
先天性心疾患の手術中に出現する頻脈・循環不全と高体温
酒井 渉
1
,
名和 由布子
1
Wataru SAKAI
1
,
Yuko NAWA
1
1北海道立子ども総合医療・療育センター 小児集中治療科
キーワード:
小児心臓手術
,
小児の高体温
,
うつ熱
,
頭部冷却
,
右心不全
Keyword:
小児心臓手術
,
小児の高体温
,
うつ熱
,
頭部冷却
,
右心不全
pp.632-635
発行日 2024年7月1日
Published Date 2024/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202962
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■症例
1歳の女児。体重8.2kg。肺動脈狭窄を伴う両大血管右室起始症に対して,根治術が予定された。安静時の経皮的末梢動脈血酸素飽和度(SpO2)はroom airで85%。経胸壁心エコー検査(TTE)で肺動脈弁は75%正常比,弁上と弁下に狭窄を認めており,左室の大きさは拡張末期容積で80%正常比であった。
■症例経過1
右室流出路再建,自己弁温存と肺動脈形成を行った。人工心肺時間135分,心停止時間は99分であった。経食道心エコー検査(TEE)で人工心肺離脱後の右室圧は左室圧の70%程度で,肺動脈弁上と弁下の狭窄なく,自己肺動脈弁の狭窄に依存していた。術後右心不全は適応可能と判断して人工心肺を離脱した。人工心肺離脱後心拍数は洞調律140bpm,中心静脈圧(CVP)10mmHg,血圧は90/70mmHgであったが,徐々に心拍数が上昇した。閉胸前後の心電図はP波がはっきりしないnarrow QRSで,閉胸によって循環動態は心拍数170→180bpm, CVP 12→14mmHg,血圧70/50→60/45mmHgとさらに悪化した。人工心肺離脱後から温風式加温装置を用いて38℃設定で加温を継続しており,直腸温は人工心肺離脱時に36.5℃であったが,閉胸時には40.1℃となっていた。なお,人工心肺離脱後から酸素化とガス交換にまったく問題なく,使用した薬物はアドレナリン0.03μg/kg/min,ドブタミン5μg/kg/min,ミルリノン0.5μg/kg/min,バソプレシン0.05U/kg/hrで,手術終了時まで変更していない。
さて,あなたならどうする?
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