徹底分析シリーズ 痛みのモニタリングへの挑戦
巻頭言
若泉 謙太
1,2
1慶應義塾大学医学部 麻酔学教室
2慶應義塾大学病院 痛み診療センター
pp.451
発行日 2024年5月1日
Published Date 2024/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202910
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- 文献概要
一般に痛みは身体の危機を知らせる警告信号である。しかし,痛みへの介入が行われていれば,痛みは患者にとって不快な症状でしかない。適切な手術や処置に伴う痛みも同様で,痛み自体に意味がないばかりか,手術や処置の弊害になり,合併症の原因になる場合すらある。
麻酔科医にとって,痛みを抑制することで手術や処置中の患者の恒常性を維持し,術後の回復を助けることは重要な責務である。加えて,慢性的な痛みには,複雑な要素で修飾される痛みの病態自体を治療する必要がある。しかしながら,痛みの評価は基本的に患者の主観に依存しており,客観的に痛みを評価することは困難とされてきた。しかも,麻酔中や鎮静下では患者からの報告による評価も難しく,痛みのモニタリングの問題は常に臨床医を悩ませている。
そうした背景から,本徹底分析シリーズでは各分野のエキスパートに痛みを客観的にとらえる方法について,現時点の可能性を紹介してもらう。麻酔中の痛み,ICUでの痛み,がんによる痛み,慢性化した痛み,そして,研究対象としての動物の痛みをどうとらえることができるのか。じつにさまざまな挑戦が始まっている。痛みのモニタリングについて知ることで,痛みの構成要因あるいは関連因子を知り,臨床現場での適切な疼痛管理にも役立つだろう。
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