山村秀夫先生の知られざる生い立ち—熊谷高校同窓会誌より

数年前に，外勤先である熊谷総合病院の麻酔科控室の机に置いてあった『熊高同窓会だより』に何気なく目を通すと，そこには驚きの内容がありました。東京大学で誕生した日本初の麻酔科教室の初代教授で，日本麻酔科学会の最高の栄誉とされる山村記念賞にそのお名前を冠した故 山村秀夫先生（享年97歳：平成29年）について，その生い立ちから，熊谷高校で学ばれた経緯，そして養子となり結婚，東京大学時代やその後まで，山村先生の甥にあたる茂木尚哉さんの回想録でした。私が知らなかった興味ある情報が満載であり，私が在住する埼玉県の高校に山村先生の深い御縁があったことに大変感動いたしました。これは熊谷高校の同窓生だけでなく日本中の麻酔科医に知らせたいと思い，直ちに熊谷高校の卒業生で，熊谷総合病院 病院長（麻酔科部長兼任）の中村信一先生に許可をいただきました。そして，どのような形で発信するか思案しました。日本麻酔科学会の関連雑誌への掲載か，または麻酔学の歴史の第一人者である弘前大学名誉教授の松木明知先生に提供するか，あるいは内容を修正して，しかるべき学術誌に投稿後に日本麻酔科学会の松木賞に応募するかなど，あれやこれやと案を練るうちに，気がつけば数年が過ぎていました。我に返って慌てて私が不定期で『判例ピックアップ』という連載を掲載しているLiSA誌に打診したというわけです。本掲載は日本の近代麻酔史の貴重な資料として，ぜひ多くの麻酔科医に読んでもらいたいと思います。本誌への転載を許諾していただいた，熊谷高校同窓会の皆様に今一度感謝いたします。