徹底分析シリーズ 出血治療戦術—適応外の製剤も駆使して止血を図る
コラム:フィブリノゲン製剤の過去を知る
香取 信之
1
Nobuyuki KATORI
1
1東京慈恵会医科大学 麻酔科学講座
pp.1160-1164
発行日 2020年11月1日
Published Date 2020/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201823
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乾燥人フィブリノゲン製剤について
現在,大量出血患者の治療ではフィブリノゲン濃度を意識した治療が主流となりつつあり,フィブリノゲンを効率的に補充する製剤として乾燥人フィブリノゲン(以下,フィブリノゲン製剤)が注目されている。2019年に日本輸血・細胞治療学会が発刊した『大量出血症例に対する血液製剤の適正な使用のガイドライン』1)においても心臓血管外科・産科・外傷などの領域での大量出血症例に対しフィブリノゲン製剤の投与が推奨されており,出血患者の救命的治療薬としてフィブリノゲン製剤への期待は大きい。しかし,現在日本で販売されているフィブリノゲン製剤(フィブリノゲンHT 1g「JB」)の適応は「先天性低フィブリノゲン血症の出血傾向」のみであり,出血による後天性低フィブリノゲン血症への適応はない。これまでに日本産科婦人科学会,日本心臓血管外科学会,日本外傷学会,日本救急医学会,日本輸血・細胞治療学会などから厚生労働省に対し(旧厚生省時代含む),外傷や分娩を契機とする大量出血時や心臓血管外科手術時の後天性低フィブリノゲン血症に対する適応承認を求める要望書が提出され,現在も厚生労働省で適応拡大の検討は進められているが,急性期出血治療に携わる医師の中には,なかなか進まない適応承認に焦燥を感じている方も少なくないであろう。いつ承認されるのか気になるところではあるが,その前に,日本におけるフィブリノゲン製剤の過去について記述したい。
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