症例カンファレンス
気管支喘息とコントロール不良の甲状腺機能亢進症を有する卵巣癌患者
川上 桃子
1
,
干野 晃嗣
2
,
宇仁田 亮
3
,
土居 ゆみ
3
,
五代 幸平
4
Koji HOSHINO
2
,
Ryo UNITA
3
,
Yumi DOI
3
,
Kohei GODAI
4
1帝京大学医学部 麻酔科学講座
2北海道大学病院 麻酔科
3愛仁会高槻病院 麻酔科
4鹿児島大学大学院医歯学総合研究科先進治療科学専攻 生体機能制御学講座侵襲制御学
pp.371-391
発行日 2018年4月1日
Published Date 2018/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201092
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麻酔科術前外来のシステムが確立した施設であれば,高リスク症例は手術予定の決定時点で麻酔科外来を受診し,多職種連携のチーム医療が展開され,最適の手術実施日が患者と医療チームの合意にもとづき決定されるであろう。しかし現実は理想とは異なる。本症例のような高リスク患者の情報が,手術実施を前提として手術前日に初めて麻酔科医に知らされることもまれではない。このような場面で,手術の延期を断固主張すべしと考える麻酔科医は多いだろう。一方で,臨床ガイドラインに反してでも患者の意向を尊重して麻酔を引き受け,無事に周術期を乗り切ることこそがプロの麻酔科医の腕の見せどころである,と考える者もいるだろう。意思決定の際には自施設で利用可能な医療資源を考慮する必要もある。
本症例の手術を予定どおり実施するか中止・延期するか。どちらの場合でも,その決定の根拠は何か。実施する場合には患者に周術期のリスクをどのように説明して理解してもらうか。中止する場合には,手術実施に合意した患者と主治医の信頼関係の間にどのように立ち入って説明し,理解を得るのか。正解のない問題であるが,カンファレンス参加者と本音の議論を展開したい。
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