麻酔薬(薬物)のキラリティー(光学活性)をきちんと理解しよう
ケタミンのキラリティーを通して
横山 麗子
1
,
山浦 健
1
1福岡大学医学部 麻酔科学教室
pp.866-873
発行日 2017年9月1日
Published Date 2017/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200947
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薬物は,現代医療において必要不可欠な存在である。特に麻酔科医にとって,薬物を使用しない麻酔はあり得ない。そのため麻酔科医には,麻酔薬や筋弛緩薬,循環作動薬についての知識が求められる。
自然界に存在する物質には,互いに鏡に映したような構造(キラリティーchirality)をもち,物理的性質は似ていても生理活性の異なるものが数多く存在する。例えば,香料として知られているリモネンにも,そのキラリティーと呼ばれるものが存在する。(R)-リモネンはオレンジの香りの成分であるが,(S)-リモネンはレモンの香りの成分になる。
近年,ブピバカインの心毒性を軽減する目的で,ロピバカインやレボブピバカインが登場し,そのキラリティーが薬理学的にも重要であることが麻酔科医にも知られるようになってきた。しかし,まだまだその立体構造についての有機化学的な理解は十分とはいえない。そこで本稿では,2008年に筆者の一人である横山が世界に先駆けて成功したケタミンの不斉合成(キラリティーの一方を化学的に作るという手法)を含め,キラリティーやエナンチオマーについて解説したい。
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