徹底分析シリーズ Pressure
忘れていないか 腹部コンパートメント症候群—見逃すと増悪しやすい危険な病態
河野 真人
1
,
祖父江 和哉
1
KAWANO,Mahito
1
,
SOBUE,Kazuya
1
1名古屋市立大学大学院医学研究科 麻酔・危機管理医学分野
pp.782-786
発行日 2015年8月1日
Published Date 2015/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200349
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コンパートメント症候群というと,四肢に発生するものがよく知られている。筋膜(ほかに骨間膜,骨)に囲まれた区画内の内圧が上昇して循環障害が生じ,その結果,その筋区画内に存在している筋肉や神経が障害される病態である。同じような理由で,腹腔内の大量出血や外傷時に生じる腹腔内圧の上昇が有害であることは古くから知られていた。20世紀後半には,腹腔内出血などの典型例以外にも,重症膵炎,大手術後,イレウス,熱傷や敗血症など,さまざまな状況で発生し,腹腔内圧上昇intra-abdominal hypertension(IAH)とそれに伴う臓器障害に関する研究報告が増加してきた。
IAHが進行した腹部コンパートメント症候群abdominal compartment syndrome(ACS)の病態は致死的である。近年,ACSに対する関心が高まり,重症化する前の早期段階で捉え,対策を講じることで救命率が上昇してきた。世界ACS学会World Society of Abdominal Compartment Syndrome(WSACS)がIAH/ACSに対する診療アルゴリズムを策定しガイドラインを公開したことと,各種の腹腔内圧測定デバイスが普及してきたこともあり,腹腔内圧管理はより一般的となっている。
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