連載 music scene
ベートーヴェン 交響曲第4番 変ロ長調 作品 60
女装男戯
pp.638-639
発行日 2015年6月1日
Published Date 2015/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200314
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前回は史上最長の交響曲,マーラーの第3番を取り上げたが,彼の交響曲の始まりはどれも独特である。
青年期に作曲された第1番は,調性も定かでない金属的な高音が鳴り続けるなか,木管がカッコウのようにさえずり始める。次作第2番では,ヴァイオリンがトレモロを奏でるところに低弦がいきなり荒々しい主題を提示する。一方,第4番はクリスマスにトナカイが引く橇が近づいてくるかのような,愛らしい鈴とフルートの序奏で始まる。第5番は,いきなりトランペット・ソロが葬送のファンファーレを吹き鳴らし,第6番は軍靴の響きを想像させる行進曲,そして第9番でハープ,チェロ,ホルンが足を引きずるように断片的に弾き始める様は,まるで心臓の期外収縮である。未完に終わった第10番を含むすべての交響曲の冒頭で,マーラーは毎回新しい趣向を凝らしたのである。
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