症例検討 よくあるトラブルを乗り越えよう 3
帝王切開の脊髄くも膜下麻酔で高比重ブピバカインを2mL投与したが,T12までしか麻酔高が上がらない
田中 克明
1
Katsuaki TANAKA
1
1大阪市立大学大学院医学研究科 麻酔科学
pp.380-381
発行日 2015年4月1日
Published Date 2015/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200189
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症例
32歳の女性。身長158cm,体重62kg。妊娠37週。特記すべき既往はなく,児のviabilityにも問題はない。定期の帝王切開である。担当の後期研修医であるB君は患者入室から右側臥位とし,くも膜下腔を穿刺して,0.5%高比重ブピバカインを2mL(10mg)投与するまでを5分ほどでやってのけた。この間,指導医は黙ってその手技を見ていたが,一言「段違いのカス当たりかな…」と呟いた。
穿刺前の血圧は123/67mmHgであった。穿刺後1分おきに血圧測定をしたが,ほとんど変化はない。通常は「お尻がポカポカする」と患者が訴え,下側の下肢の不動化が始まるために,側臥位から仰臥位となるのにも介助が必要となるが,この妊婦は介助を待たずにほぼ自力で仰臥位になってしまった。「ホントに効いているのか?」と産科医は怪訝な顔をB君と指導医に向ける。すぐにベッドを頭低位として,B君は麻酔レベルのチェックを始めた。穿刺後10分が経過して,左側はL1,右側はT12である。
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