症例検討 よくあるトラブルを乗り越えよう 1
ラリンジアルマスクで換気ができなくなった—原因はさまざま そこが難しく,興味深い
古谷 健太
1
FURUTANI,Kenta
1
1新潟大学医歯学総合研究科 麻酔科学分野
pp.184-186
発行日 2015年2月1日
Published Date 2015/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200135
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症例
67歳の女性。身長152cm,体重65kg。変形性股関節症に対して,人工股関節置換術(THA)が予定された。術中の体位は仰臥位である。糖尿病(HbA1c 8.2%)と高血圧で内服加療中である。気管支喘息の既往があるが,最近は発作もないため,特に治療していない。
対側のTHAの既往があり,その際は全身麻酔とフェンタニル持続静注による患者自己調節鎮痛(PCA)で管理されたが,術後の悪心が強かったため,今回は術後鎮痛に硬膜外麻酔を併用する予定とした。L1/2より硬膜外カテーテルを挿入後,フェンタニル50μgとプロポフォール100mgで全身麻酔を導入した。入眠を確認し,吸入セボフルラン濃度を5%で開始した。マスク換気の後,ラリンジアルマスク(LMA)ProSealTM#3を留置した。自発呼吸がすみやかに回復したため,術中の呼吸管理は自発呼吸で行う方針とした。セボフルラン濃度を1.5%に低下させ,執刀20分前に0.375%ロピバカイン10mLを硬膜外腔に投与した。執刀後も血圧,心拍数,呼吸数などに変化はなく,硬膜外麻酔はよく効いている印象であった。術中は1回換気量300mL前後,呼吸数15回/min前後で安定していたため,フェンタニルは追加投与しなかった。しかし,手術が中盤に差し掛かったころ,1回換気量が減少し,カプノメータの波形が変化した。その時点での経皮的末梢動脈血酸素飽和度(SpO2)は98%である。
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